
新宿駅で行われていた鳩被害対策の“実証実験”が、思わぬ形で注目を集めています。
結論から言うと――鳩はまったく動じませんでした。
「鳩被害対策グッズの実証実験中」と書かれた張り紙の下。そこには、鳩を威嚇するはずの猫の写真パネルが並んでいるにもかかわらず、パネルの前で悠々とくつろぐ鳩の姿がありました。
あまりにも“結果が分かりやすい”光景はXで瞬く間に拡散され、「舐められてるw」「鳩はかしこい、ニンゲンは愚か」といった声が相次ぎ、21万人以上の「いいね」が付き話題に。
本記事では、新宿駅で行われていた鳩対策実証実験の内容と衝撃の結果、なぜここまで拡散されたのか、そして鳩が人間の対策を見抜いてしまう理由までを、Xの反応とともに分かりやすく解説します。
新宿駅で行われていた「鳩被害対策の実証実験」とは?
新宿駅西口では、鳩によるフン害や滞留を防ぐ目的で、鳩被害対策グッズの「実証実験」が行われていました。現地には「鳩被害対策グッズの実証実験中」と書かれた張り紙が掲示され、その下には鳩を威嚇するための猫の写真パネルが複数設置されていたのです。
猫は鳩にとって本来天敵にあたる存在であり、視覚的に警戒心を与えることで近寄らせない狙いがあったと考えられます。実際、鳥よけ対策として猛禽類を利用した方法は、駅や商業施設、農地などでも広く用いられてきました。
しかし今回の実証実験は、鳩対策の効果を検証する過程が偶然にも可視化されてしまいます。実験中であることを示す掲示と対策グッズの猫パネルが並ぶ中、すぐ前にはまるで何事もないかのようにくつろぐ一羽の鳩の姿がありました。
この一場面が撮影され、Xに投稿されたことで、「実証実験の結果が一瞬で分かる写真」として注目を集めることになりました。
実験の“結果”が一目で分かる衝撃の光景
この鳩被害対策の写真が話題を呼んだ最大の理由は、説明が一切いらないほど実験結果が明白だったところにあります。「実証実験中」という掲示と、その前でくつろぐ鳩――この対比だけで、実験の成否が瞬時に伝わってしまったのです。
逃げる様子も、警戒する素振りもなく、首をすくめることすらしない鳩の姿は、「対策が機能していない」ことを雄弁に物語っています。本来であれば近寄らないはずの鳩が悠々と佇んでいる光景は、見る側に強烈な違和感と笑いを同時に与えるものでした。
投稿者によると、写っている鳩は1羽だけでなく、周囲には他にも複数の鳩がたむろしていたとのこと。つまり、偶然通りかかった1羽が写り込んだのではなく、鳩たちにとって“安全な場所”として認識されていた可能性が高い状態でした。
猫の写真パネルは結果的に“何も起きない安全なオブジェ”として、鳩に判断されてしまったようにも見えます。このあまりにも分かりやすい実験結果が、Xユーザーの笑いとツッコミを誘い、一気に拡散されることになりました。
鳩に「舐められてるw」なぜXで爆発的に拡散したのか

この投稿がXで急速に拡散された最大の理由は、写真1枚だけで“オチ”まで理解できる完成度の高さにありました。実証実験を示す張り紙と対策グッズ、そして対策グッズの前で堂々とくつろぐ鳩――説明を読まなくても、「これは失敗している」と直感的に伝わる構図です。
そこに加わったのが、Xユーザー特有の端的で鋭いツッコミでした。「舐められてるw」「むしろ落ち着いた場所になってるww」「効果なし」といったコメントは、状況を一言で言い表しており、共感と笑いを同時に生み出しました。
さらに、「鳩はかしこい」「ニンゲンは愚か」「猫かわいい」といった“要約系コメント”が拡散されたことで、投稿自体がネタとして完成された状態になっていきました。事実の説明、感想、オチがすべてコメント欄で補完されたことで、よりわかりやすくなり拡散を後押ししました。
結果として、この投稿は21万人以上の「いいね」が付き、単なる現地写真から「人間の対策を軽々と見抜く鳩」という物語へと昇華。Xというプラットフォームの特性と、写真が持つ即時性が噛み合ったことで、爆発的な拡散につながりました。
実は初めての失敗ではなかった?新宿駅・鳩対策の歴史

今回の“猫パネル実証実験”が大きな話題を呼びましたが、実は新宿駅西口で鳩対策が実施されるのは、これが初めてではありません。X上では以前から、「この場所では何度も鳩対策が試されてきた」という目撃談や投稿があります。
実証実験という形で可視化されたのは今回が印象的だっただけで、新宿駅周辺では長年にわたり、さまざまな方法で鳩を遠ざけようとする試みが繰り返されてきたのです。
ワシ・ヘビ・フクロウ・カラス…すべて無視
過去に設置されていた鳩対策として、Xユーザーの証言で多く挙がっているのが、猛禽類や天敵を模したビジュアルです。ワシやフクロウ、ヘビ、さらにはカラスの写真など、鳩にとって本来は警戒すべき存在が実験に使われてきました。
しかし、これらの鳩対策はいずれも長続きしなかったとされています。「最初は鳩が減った気がした」「一時的には効果があった」という声がある一方で、時間が経つにつれて鳩が戻り、最終的には完全に無視される状態になっていったという報告があります。
天敵を“見せる”という人間側の発想は一見効果があるように感じるものの、鳩にとっては正体がわかれば何てことの無いものだったのかもしれません。
「最初だけ効く」鳩の学習能力
こうした経緯から浮かび上がるのが、鳩の高い学習能力です。初めて見たものに対しては警戒しても「動かない」「襲ってこない」「危険が及ばない」と判断すると、次第に警戒しなくなっていきます。
実際、Xでも「一時的にはいなくなったが、すぐに慣れた」「学習されるのが早い」という声が多く見られました。今回の猫パネルも、設置直後は多少の効果があった可能性は否定できませんが、鳩にとっては安全かどうかを確認する“観察期間”を経て「問題なし」と判断された結果が投稿写真の状況だったと考えられます。
つまり、新宿駅の鳩対策の歴史は、「人間が対策を考える → 鳩が見抜く」という攻防の繰り返し。今回の実証実験は、その構図を非常に分かりやすく示した一例だったといえるでしょう。
なぜ鳩は“偽物の天敵”を見抜いてしまうのか

人間から見ると、猫や猛禽類の写真パネルは十分に“怖そう”に見えます。それにもかかわらず、鳩が平然としている様子を見ると、「なぜ騙されないのか?」という疑問に思うかもしれません。
鳩が騙されない理由は、鳩が人間とはまったく異なる基準で危険かどうかを判断している点にあります。見た目が天敵に似ているかどうかよりも、「本当に襲ってくる可能性があるのか」を行動や変化から冷静に見極めているのです。
動かない=危険ではないと判断?
鳩にとって、最大の危険信号は“動き”です。突然の接近や視線の変化、羽ばたきといった挙動がなければ、たとえ天敵に似た姿であっても、差し迫った危険とは認識しにくくなります。
今回設置されていた猫の写真パネルは、常に同じ位置で同じ表情のまま動くことがありません。鳩から見れば、「近づいても反応しない」「逃げる必要がない存在」と判断されてしまった可能性が高いです。
X上でも「動かないから安全なんだよね」「平面だと無反応」といった指摘があり、動きの有無が警戒心を左右する重要な要素であることがわかります。
鳥の視覚構造と人間との見え方の差
もう一つ見逃せないのが、鳥と人間では“見え方”そのものが違うという点です。多くの鳥類は、人間よりも色の識別能力が高く、視野も広いとされています。
そのため、人間の目にはリアルに見える写真でも、鳩にとっては「平面の模様」や「不自然な物体」として認識されている可能性があります。実際、Xでは「人には猫に見えるけど、鳥の視界では別物なのでは?」といった考察も見られました。
鳩は視覚情報に加えて、周囲の音や空気の変化など複数の要素を総合して危険を判断します。その結果、視覚情報だけしかない“偽物の天敵”は、鳩の危険判断基準を満たすことができず、安全と判断されてしまったのです。
ネットの体験談「本当に効果があった鳩対策」

今回の実証実験が「完全に舐められている」と話題になる一方で、X上では「実際に効果があった」とされる鳩対策の体験談も数多く共有されていました。それらの声を見ていくと、写真や模型といった静的な対策とはまったく異なる共通点が浮かび上がります。
もっとも多く挙げられていたのが、本物の猫の存在です。保護猫を飼い始めたことで、廃棄物置き場に寄りついていた鳩やカラスが来なくなったという投稿があり、「動き」「気配」「予測不能さ」が警戒心を生んだ可能性が指摘されています。
また意外な例として語られていたのが、ラジオの人の声です。AMラジオを日中だけ流すことで鳥が寄りつかなくなったという体験談もあり、不規則に変化する音が「生き物がいる環境」として認識された可能性が考えられます。
防鳥ネットや固定されたオブジェについては「すぐ慣れた」「普通に突破された」といった声も多く、鳩は静止した人工物には適応が早いことがわかります。
鳩対策に効果があった体験談に共通しているのは、「鳩に学習されにくい要素」が含まれている点です。動きや音など、状況が一定でない対策こそが、鳩にとって“危険な存在”となり、結果的に効果を発揮しているのかもしれません。
鳩はかしこい、ニンゲンは愚か…対策失敗でも学びは残った

新宿駅で行われていた鳩被害対策の実証実験は、結果だけを見れば“完全な失敗”だったのかもしれません。猫の写真パネルの目の前でくつろぐ鳩の姿は、「舐められてるw」という言葉がこれ以上ないほど似合う光景でした。
しかし、この一枚の写真がここまで拡散された理由は、鳩対策の失敗結果が単なる笑い話に終わらなかったからです。鳩は想像以上に観察力が高く、危険かどうかを冷静に見極める存在であること。そして、人間側の安易な対策は簡単に鳩には見抜かれてしまうこと。その現実が、これ以上なく分かりやすい構図で写真に写っていました。
また、今回の実証実験は「何が効かないのか」を証明したという点では、大きな意味を持っています。静止した偽物の天敵では通用しない、鳩は学習する、そして本当に効果があるのは“予測できない要素”だということが、多くの人に学びとして共有されました。
「鳩はかしこい、ニンゲンは愚か」。そんな自嘲気味の言葉が広まった背景には、失敗から学び、次につなげる余地がまだ残されているという前向きな視点も含まれているのかもしれません。